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「AIに負けない子どもを育てる」より〜読解力を身につけるにはどうすればいい?〜

国立情報学研究所所長の新井紀子の著書「AIに負けない子どもを育てる」から、授業、生徒・保護者へのアドバイスに活用できる要素を整理する。

 

①RSTの6分類

新井紀子氏が主導しているRST(リーディングスキルテスト)では、「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を以下の6分野に分類してテストを設計している。

1.係り受け解析

文の基本構造(主語・述語・目的語)を把握する力

2.照応解析

指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力

3.同義文判定

2文の意味が同一であるかどうかを正しく判断する力

4.推論

小学校6年生までに学校で習う基本的知識と日常生活から得られる常識を動員して文の意味を理解する力。

5.イメージ同定

文章を図やグラフと比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力

6.具体例同定(辞書・理数)

言葉の定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力

 

この、RSTの結果と、偏差値の相関は高く、読書が好きかどうか、勉強時間との相関はみられないそうで、読解力が学力の土台になっている事が伺える。新井氏自らが提示している模擬授業では、6分野の何を鍛えるかを明確にした授業構成が提案されている。

 

現在RSTを定期的に受験し、新井氏と共同で読解力向上に取り組んえいる自治体として、埼玉県戸田市東京都板橋区富山県立山町福島県があげられていたので、今後の実践に注目していきたき。

 

新井紀子氏の提言

未だ読解力を向上させるための科学的根拠のある方法論はないとのことですが、新井氏自身のこれまでの研究で得た知見から、学齢別(幼児期・小学校低学年・中学年・高学年)の読解力向上のための方法論を提示しています。

 

実際に小中学生を相手にしていると、学年に関係なく、読解力には大きな開きがあります。読解力が低い(テキストに書いてある意味が読み取れない)事が、成績向上の足かせになっていると感じる場面は多々あります。新井氏の提示している方法論のうち、生徒指導や保護者へのアドバイスとして活用できそうなものを列挙します。

※状況によっては、学齢を遡ったトレーニングが必要になることもあると考え、学齢的分類を外して列挙します。

 

1.身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やす。

2.信頼できる大人に、自分は守られているという実感を持てる。

3.日々の生活の中で、子どもが身近な小さな自然に接する機会をとる。

4.子どもが自分の関心に集中できる時間を十分に確保する。

5.長く書くことが苦痛にならない持ち方で鉛筆を持ち、マスの中におさまるように丁寧に字を書けているか見守る。

6.主語・動詞・目的語を使って見たことを短い文で説明できるようにする。

7.生活習慣が乱れていないか注意する。

8.ネットやゲームに依存させない。

9.板書の量を徐々に増やす(中学年から)⇒板書をリアルタイムで写せるようにする(高学年)

10.理科や社会の教科書を音読する。特に定義の文は必ず復唱する。

11.読書を奨励する(中学年)

12.第三者に正確に伝わる表現を工夫できるようになる。

15.観察や実験、調理実習「見たこと・体験したこ」を時系列で正解に文字や図、表やグラフを使ってレポートで表現できるようになる。

16.図工で見たものを見たとおりに表現できるようになる。

17.新聞を読むことを奨励する(高学年)。ニュースの要約を200字、感想を200字程度で書かせる宿題を出す。

18.いい加減に話していると聞いてもらえないことを学ばせる。

19.定義が出てくるときには必ず「とは」を使って説明させることを繰り返す。

20.「どのあたりは、どのような理由でどんな気候になるか?」など、論理的に説明できるようにする。

 

ポイントは、「ドリル・暗記型」ではなく、「論理型」に育てること。小中学校時代に「暗記すれば点が取れた・点数が上がった」という成功体験を積むと、暗記に頼りがちになるので注意が必要。キーワード検索的な読みから脱却し、意味を理解した上で、知識を獲得できるようになる事が重要。

 

③実践への活用と課題

指導の目的を「生徒が自ら教科書を読み、知識を増やしていけるようにする事」とする。壁になるのは、生徒・保護者の第一の関心事が成績上昇(テストの点数)であり、読解に苦しむ生徒にとっては単純暗記の方が点数が取れると実感する場面が多々あること(講師自身が暗記型を推奨してしまう)。全教科で新井氏の提案をもとにRSTのどの力をトレーニングしているかを意図した授業を実践したうえで、単純暗記よりも成果が出ることを実感させる必要がある

 

また、読解力を鍛える授業運営は、文を書かせる機会が多く、生徒の書いた文章の正誤判断や訂正をどのようにしていくかを検討する必要がある。書く指導については、福嶋隆史氏の著書も参考にしながら実践していく。

 

 

AIに負けない子どもを育てる

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