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アダプティブラーニングの壁〜想起・精緻化・生成の過程を組み込めるか〜

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2018年8月にアダプティブラーニングについて調査し、想像以上に実用化が進んでいることに衝撃を受け、市場拡大も想像以上に速いのではないかと予測していました。コロナ感染の拡大もあり、一見アダプティブラーニングの拡大が加速しそうな状況ですが、思ったよりも広がりを見せていないというのが実感です。確かにAIにより膨大なデータの中から、一人ひとりの弱点に合わせた問題が抽出されることは一見効率的に感じますが、記憶・定着し、使える知識に昇華させる過程を考えると、学習者自身が学習したことを振り返る過程(「想起(学んだことを思い返す)」「精緻化(過去に学んだことと結びつける)」「生成(学んだことを自分の言葉で表す)」を組み込むに至っていたに事が原因だと考えています。

 

アダプティブラーニング+指導者の組み合わせのパターンもありますが、「できるようになった事への承認」や、「AIが抽出したデータのフィードバック(データを分かりやすく伝える)」といった枠を超える事ができず、従来の教育スタイルを超える成果には未だ至っていないのが現状ではないでしょうか。

 

自立した学習者であれば、おそらくアダプティブラーニングのシステムのみで成果を出すことができるでしょうが、そのような人はおそらく、アダプティブラーニングの仕組みがなくとも、一冊の参考書や問題集で成果を出すことができると思われます。

 

重要なのは「想起」「精緻化」「生成」といった過程を学習者自身で行うことで、指導者の役割は、上記過程に学習者を導き、サポートすることだと考えます。アダプティブラーニングを活用するメリットは、ピンポイントで弱点単元が抽出されるので「なぜこの単元が苦手なのか?」「この単元ができなかった原因は何か?」「この単元のポイントは何か?」といった自省(自答)をする機会が、通常の学習よりも多いということだと思います。この自答を促し、サポートするためには、やはり現状サポーターとしての指導者は不可欠の存在のように感じます。

 

3年前の調査に比べ、多くの企業がデータベース構築に加わっているので、おそらく弱点発掘のシステムや、単元の細分化、類題などのデータベース量やシステム改善はハイペースで進んでいると思われます。しかし、3年前にあったサービスがすでに終了しているケースもあり、アクティブラーニングは次のステージに進むための壁に直面している真っ只中にあるのではないかと考えています。

 

IT教育の最先端を行っているともいえる、「atama+EdTech研究所」の記事で、次のような課題点が提示されているのはとても興味深いです。

〜以下引用〜

アダプティブラーニングというサービスについて語られる時、その評価がレコメンドやアルコリズム自体のクオリティのみに焦点が当てられ、そこに掲載されているコンテンツ(教材)作成と同期をとることの重要性を語られていないことが多い点だ。

〜以上引用〜

edtech-research.com

 

〜以下、3年前の調査概要〜
経済産業省の参考資料でもEdtechの代表事例として紹介されている米国のKNEWTONは、日本でも多くの企業と提携して、アダプティブラーニングの可能性を提示しています。
①KEWTONのアダプティブラーニングの特徴
1.レコメンデーション(次の学習ステップの提案)
一人ひとりの学習者に次に取り組む最適の課題が提示される。
2.アナリティクス(学習状況分析)
指導側はクラス全体の進捗だけでなく、つまずいている学習者や先に進む準備ができている学習者の情報も把握でき、適切なタイミングでの個別サポートが可能。学習者は自分自身の学習進捗を確認することができる。さらに管理者や保護者も詳しい学習状況を知ることが可能。
3.コンテンツ・インサイト
学習者が実際にどのように教材を活用したかを分析した情報を得ることで、出版社や教材提供元は継続的に教材の改善ができるようになる。これにより指導者と学習者のニーズに応じた教材の提供が可能になる。

 

②KEWTONと提携している各企業のサービス事例
1.Classi(クラッシー)
ソフトバンクグループとベネッセの合弁会社Classi(クラッシー)が提供するサービス。
学習動画・Webドリル・Webテスト・先生と生徒のデータ共有・先生の指導素材の整理や生徒との共有・アンケート・指導記録・帳票出力・生徒カルテ・校内や校外での情報共有が可能。

2.G-PAPILS(学研)
実力派講師陣による高品質な授業映像を見て学習し、学研がもつ豊富な問題に取り組む。そして、生徒の理解度や学習進度に対して、人工知能(AI)による分析が行われる(学習アナリティクス)。加えて、目標設定に基づき、次に学習すべき最適な教材が選ばれる(教材レコメンデーション)。
また、生徒へアドバイスをして「やる気」を引き出すのが「学習メンター」。「学習メンター」は、学習アナリティクスに応じて、生徒への動機付けの活動(メンタリング)を行う。その手法は、松田岳士教授(首都大学東京)監修によるオリジナルで、生徒の心に響くように伝えることを意図したメンタリングメソッド。
3.Z会Asteria
中学生・高校生、社会人までを対象に、意欲・達成度にあわせて学年を越えて進められる無学年制カリキュラム。達成度にあわせ次々に進めることができ、添削指導も受け放題。iPad1台で学習が全て完結する。Knewton のアダプティブ・エンジンを搭載し、問題を解くごとに、解答の正誤、学習履歴、習熟度などのデータを総合して、受講者にフィットした問題や映像講義が提示される。「英語4技能講座」「数学新系統講座」「総合探求講座」を設置。

※現在「数学新系統講座」「総合探求講座」は終了。

【参考】

japan.knewton.com

classi.jp

www.s-papils.com

www.zkai.co.jp

www.zkai.co.jp

surala.jp