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集団で学ぶ価値⑤_「問い」の重要性〜知識構成型ジグソー法の事例から〜

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協調学習や基本概念を学習する事例として、「資質・能力を育成する教育過程の在り方に関する研究報告書1」では、知識構成型ジグソー法の事例を紹介しています。

【知識構成型ジグソー法の実践事例】

知識構成型ジグソー法という授業実践では、与えられた一つの課題に学習者が3、4の資料を分担して読み合わせて答えを作るそうです。

(例)「豊臣秀吉はどのような社会を作ったのか」

この問に対し、「身分統制令」「刀狩令」「太閤検地」に関わる資料を分担して読み込み、三人組で内容を交換して答えを出す。そこから「秀吉は農民を武士と区別し、年貢などの負担を重くして反乱を防ぎ、武士にとって安定した社会を作った」という答えが生徒の8割以上でなされる。さらに「今の社会は誰にとって住みやすいのか?」など、実践的な問が生まれれる。

※仮に「豊臣秀吉が作った3つの制度について学ぼう」という問いでは、単に知識の羅列した答えになりやすい。知識構成型ジグソー法では「知識の統合を求める問い」によって子供の考える力を引き出す。

 

【知識構成型ジグソー法の構造】

①知識の統合を求める問い

豊臣秀吉はどのような社会を作ったのか?」

②ビッグアイディアを掴む

豊臣秀吉は武士にとって安定した社会を作った」

※上記は「階級」という概念の具現化(ビッグアイデア)になっている。

③実践的な問いの創造

「今の社会は誰にとって住みやすいものか?」

①〜③の流れを通じて、読み・書き・話す・聞くという基礎力が身につき、他者とのやり取りを通じて抽象度を高める「協調学習」のメリットを活かしている。

 

【基礎と基本の違い】

基礎(Basic)と基本(Essential)という言葉は混同して使われることがありますが、報告書では基礎と基本を明確に区別しています。

※基礎(Basic)=基礎的リテラシー

身につける事(向上する事)で「思考」がしやすくなる能力。読み・書き・計算だけでなく、Web上の情報収集や情報発信、動画や写真編集といったICTリテラシーも含む。「学びの道具」として使えるようになる事が目標。

※基本(Essential)=基本概念

基本概念と、その具現化であるビッグアイデア。基礎と基本は基礎的リテラシーを用いて、基本概念を身につける(知識を結びつけて、自分なりに納得する)という関係といえそう。また、基本概念を学習する過程で基礎的リテラシーが向上するという関係も成り立つ。

 

【ここまでの学び】

学習の中心が「基本概念の追求」になるように授業を検討していきたい。「基本概念の追求」を軸に、必要な基礎的リテラシーを向上させていくのが理想的な形。また、協調学習の場が魅力的であれば、その場に参加するために最低限必要な基礎的リテラシーがあれば、生徒が基礎的リテラシーを向上させるモチベーションにもなりそう。「基本概念の追求」のためには、どのような「問い」を立てるかが最重要であり、基本は指導者が「問い」を立てるが、最終的には生徒自らが「問い」をたて、生徒が立てた「問い」を知識構成型ジグソー法などの協調学習で学んでいくのが理想といえそう。ここまでの学びから授業案を組み立てる手順を整理すると

①授業で扱う「概念」の決定

②「概念」を身に付けるための「問い」の決定

③想定される「ビッグアイディア」の予測

④想定される「派生的な問い」「実践的な問い」の予測

上記を想定した授業ができれば、想定を超えた生徒の発言や問いに感動する授業が実践できそうでワクワクします。基本概念を学ぶために必要な「基礎的知識」は基礎的リテラシーとして、いつでも参照できるようにまとめて提示してしまうのも一つの手段かもしれません。「言うは易し行うは難し」実践しながら、集団で集う価値のある授業を目指していきます。