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集団で学ぶ価値⑧_「相手の話を聞く楽しさの実感」が協調学習のスタートライン

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集団で学ぶ価値を高める要素の一つが協調学習。つまり、他者と意見を交換する場面が多くなります。安心して発言できる空間を創出する必要がある一方で、意図しないと一部の生徒だけに発言が偏る状況になりがちです。「発言すること」以上に「聞く力をつける」という事が大きなテーマになりそうです。「聞く力をつける」という点で参考になるのが、宇都出雅己氏の「絶妙な聞き方」です。宇都出氏は、よく陥りがちな状況として、一見他者の話を聞いているようで、実は心の中では「自分の話」を聞いているという状況を紹介しています。

(例1:実は「自分の話」を聞いている)

「この前ハワイに行って・・・」という話を聞いた時に、心の中で「ハワイは○年前に行ったな〜」「ハワイはいいところだったな〜」など、自分の心の声を聞いている。

 

また、一見他者の話を聞いているようで、実は「自分の話」を聞いているもう一つの事例として、「会話泥棒」の事例を紹介しています。

(例2:会話泥棒)

「貯金ができないんですよ〜」「俺も君の歳のころは貯金なんてしてなかったよ〜」

一見親切にアドバイスをしているようですが、「相手の発言の背景や思い」などに意識を向けず、いつのまにか「自分」の話にすり替わっています。宇都出氏は、アドバイスや意見も会話泥棒の一種と論じています。

 

【話を聞く人にスポットライトを当てるイメージ】

このように「相手の話」を聞いているようで「自分の話」を聞いてしまっている状況を脱却するために、宇都出氏は「スポットライトを当てるイメージ」を推奨しています。スポットライトが当たっている人の話を聞く。つまり、スポットライトが当たっている人が「なぜそう感じたのか?」「なぜそう考えたのか?」を掘り下げて聞いていく形式です。特に授業の場面では、スポットライトを誰に当てるかをコントロールするのが講師の役割であり、会話泥棒を制御する事も重要な役割と言えそうです。また、旧来の知識伝達型の授業スタイルから脱却できないと、講師自身が会話泥棒になってしまう危険性が高いので注意が必要です。

 

【事象ではなく、人を聞く】

例えば、「今日は楽しい映画を見た」と話す人がいた時に、「どんな映画だったんだろう?」というのは「事象」にスポットを当てた聞き方。「この人は何に感動したんだろう?」というのが「人」に焦点を当てた聞き方で、宇都出氏は「人」に焦点を当てて話を聞くことが相手の充足感につながると提示しています。また「人」に焦点を当てるためには「○○さんはどう思ったの?」など、「Youクエッション」を取り入れる事を推奨しています。協調学習だけでなく、仕事の場面全般において「相手の話を聞く」「相手を知る」事が「自分の話をする」「アドバイスをする」事よりも重要度が増していると感じています。極論すると、現代においては「仕事=相手の話を聞くこと」と言っても言い過ぎではないかもしれません。

【相手の話を五感で聞く/相手の話を聞くために話を遮る】

宇都出氏は「相手の話を聞く=相手の見ている映像や感じている事を五感で感じ取る事」とし、相手の見ている映像や感覚を共有するために「具体的には?」といった質問が効果的と述べています。また、相手を知るために、話が本質からズレている時には積極的に話を止める必要があるとしています。他にも、相手の実感を引き出す技術として「ディソシエイト(客観的に見ている状況/非当事者意識)」の状況から「アソシエイト(状況に同化/当事者意識)の状態に導く必要性を提示しています。これらの認識も協調学習に応用できそうです。過去の問題解決事例を学ぶ機会が多い教科学習においては「アソシエイト」の状況に導いたうえで、相手の考えを聞く事で、より思考が深まっていく可能性がありそうです。

 

一つの授業で、できれば全生徒にスポットライトを当てて行くのが理想ですが、まずは「スポットライトが当たっている生徒の話を聞く」ことの楽しさを全生徒が実感することがスタートラインになりそうです。