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基本概念を学ぶ生物③_遺伝子の本体はDNAか?タンパク質か?

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【問題】遺伝子の本体はDNAか?タンパク質か?

【基本概念】形質転換

【基礎知識】

・19世紀、メンデル(オーストリア)はエンドウの種子の形や子葉の色などの形質に注目した実験を行い、遺伝の規則性を発見

・20世紀になると、サットン(アメリカ)らによって染色体に遺伝子があるという説が提唱される。

・グリフィス(イギリス)はマウスを利用した実験で、「病原性のS型菌」と「非病原性のR型菌」を利用し、R型菌がS型菌の形質を持つように変わる「形質転換」という現象を発見

【問い】

①その問題が生まれた背景は?

・染色体はDNAとタンパク質から構成されているため、そのどちらが遺伝子の本体なのかが議論された。

 

②その概念によってどのようにして問題が解決したか?

※グリフィス(イギリス)のマウスを利用した実験(1928年)

1.熱で殺したS型菌をマウスに注射→発病しない

2.1とR型菌をまぜて注射→発病(S型菌が多く見つかる)

R型菌がS型菌の形質を持つように変わった(形質転換)

※エイブリーの実験(1994年)

1.S型菌をすりつぶして得た抽出液をR型菌に混ぜて培養すると、S型菌に形質転換するものが出現。S型菌の性質を維持したまま増殖。

2.S型菌の抽出液をタンパク質分解酵素で処理したものでも、R型菌からS型菌への形質転換が起こる。

3.S型菌の抽出液をDNA分解酵素で処理したものは、R型菌からS型菌への形質転換が起こらなかった。

※ハーシーとチェイスの実験(1952年)

T2ファージというウィルス(タンパク質の殻でできた頭部にDNAを持つ)を大腸菌に感染させるときに、大腸菌の内部に侵入するのがDNAかタンパク質かを調査。ファージはDNAだけを大腸菌に侵入させ、その後DNAだけでなくファージのタンパク質も合成され、多数の子ファージがつくられることがわかった。

 

③その後どうなったか?

・シャルガフ(アメリカ)はいろりろな生物のDNAについて調べ、含まれる塩基AとT、GとCの割合がそれぞれ等しい事を示した。

・ウィルキンスとフランクリン(イギリス)のX線解析によってDNAの基本構造が螺旋であること、数本のポリヌクレオチド鎖からなることが推定された。

・ワトソン(アメリカ)とクリック(イギリス)の研究

シャルガフ、ウィルキンスの研究をもとに、1953年にDNAの二重螺旋構造モデルを提唱。1962年にワトソン・クリック・ウィルキンスにDNAの立体構造解明によりノーベル生理学・医学賞が与え与えられた(フランクリンは1958年37歳の時にがんで亡くなっていたが、業績は近年再評価されている)。

 

【現代への活用】

グリフィスによる形質転換の発見(1928年)から、ワトソンとクリックによる二重螺旋構造モデルの提唱(1953年)までの流れを見ると、科学の進歩とはそれまでの研究成果の上に積み重なっている様子が伺える。「遺伝子の本体はDNAか?タンパク質か?」「DNAの構造はどうなっているのか?」という疑問は、世界史で発生するような喫緊の問題とは異なるが、純粋な「何で?」という疑問や、「根源を問う」姿勢は、確実に人類史を揺るがす新たな発明に繋がっている。