【問題】
ローマの軍事力低下に歯止めをかけるにはどうすればいい?
【基本概念】
私兵
【問い】
①その問題が生まれた背景は?
・相次ぐ戦乱による農地の荒廃で、農地を手放し無産市民となった市民と、支配階層の貧富の差は拡大。中小農民の没落はローマの軍事力低下にも繋がった。
・グラックス兄弟は、貧民問題解決とローマ市民軍再建のため、一定以上の公有地を所有するものから土地を返還させ、無産市民に分配しようとしたが、貴族や富裕者の猛反発を受け兄は殺害され、弟は自殺に追いやられた。
・グラックス兄弟の改革が挫折したことにより、貧富の差はさらに進行。武具自弁によって編成していた市民軍は成り立たなくなった。
②その概念によってどのようにして問題が解決したか?
・平民派の政治家マリウスは、慢性的な兵力不足を解消するために、無産市民を職業軍人として雇い入れる軍制改革を行った。
③問題解決後どうなったか?
・軍隊は、有力者である将軍が庇護民である無産市民を集めてつくる私兵となり、兵士は将軍を政治的に指示し、将軍は兵士に土地を与えて退役後の生活を保証するという保護・庇護関係が軍隊の編成原理となった。
・元老院の伝統的支配を守ろうとする閥族派のスラも私兵を用いてマリウスに対抗。互いに私兵を使って相手の党派を殺し合った。
・ローマ本国の内乱に乗じて、各地でローマ支配に対する反乱が起こり政治家はその対応に追われるようになった。
・内乱を武力で収拾した実力者のうち、ポンペイウス・クラッスス・カエサルが軍事同盟を結んで元老院と閥族派に対抗し政権を握った(三頭政治)。
【学びの活用】
貧富の差の拡大により、大多数を占める無産市民と、既得権益を手放すことを拒む権力者の対立構造が鮮明になっていった。グラックス兄弟の当初の問題意識は、対外戦争のための軍事力低下をどのように解決するかだったが、グラックス兄弟の死後は、権力者の関心事は国内の政治権力争いで勝利するための私兵確保に向かった。武力闘争は、強力な武力によってしか収束させる事はできず、有力な3人の政治家の同盟という形で一旦の集結を迎えた。
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