【問題】
【基本概念】
細胞内共生
【基礎知識】
長さが1〜数μmの細胞小器官。呼吸によって生命活動に必要なエネルギーを取り出すはたらきがある。
※葉緑体
直径5〜10μm、厚さ2〜3μm。光のエネルギーを吸収して光合成が行われている。
・真核生物が現れる以前の地球には、酸素を使わずに有機物を分解する原核生物や、酸素を使って有機物を分解する原核生物(好気性細菌)、光合成を行う原核生物(シアノバクテリアのなかま)などがいたと考えられている。
※細胞内共生
ある生物の細胞内に他の生物が取り込まれて共生すること。
【問い】
①その問題が生まれた背景は?
・ミトコンドリアや葉緑体は、呼吸や光合成におけるエネルギー変換に重要な役割を果たしているにも関わらず、原核生物には見られない。
②その概念によってどのようにして問題が解決したが?
・ミトコンドリアと葉緑体はDNAを持っていること、また、細胞内でそれぞれ分裂によって増殖している事からもとは独立した生物であったと考えられている。
・原始的な真核生物に好気性細菌が取り込まれて共生することでミトコンドリアになり、シアノバクテリアが取り込まれて共生する事で葉緑体になったと考えられる。
・細胞内共生は、現存する生物にも見られる。
(例)ミドリゾウリムシ(クロレラと共生)
一度暗所でクロレラを除去したミドリゾウリムシが、食べ物の取り込み口からクロレラを取り入れると、一部のクロレラは外側に特別な膜ができて消化されずに生き残る。生き残ったクロレラは、ミドリゾウリムシの細胞質において細胞分裂を行って数を増やし共生する。
③問題解決後にどうなったか?
・細胞内共生の考え方は19世紀から提唱されていたが、現在では葉緑体やミトコンドリアの増殖が宿主(やどしゅ)にコントロールされている事がわかっている。
・共生の一歩手前として、単細胞の藻類を細胞内に取り込み、中で大きく育てて光合成をさせ、光合成産物をもらったあとで消化する「盗葉緑体」を行う生物がいる事がわかっている。(例)渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)がクリプト藻を取り込み盗葉緑体を行う。
・精子のミトコンドリアは卵の中に入ると分解されてしまい、卵のミトコンドリアだけが子に受け継がれることがわかっている。
【学びの活用】
普段の生活の中では1つの細胞に意識を向けることはほとんどありませんが、「細胞内でエネルギーを生み出すために積み重ねられている無数の化学変化やそれを支えている酵素」「ミトコンドリアがもとは別の生物だった」という事実を知ると、自身の存在が生物史の積み重ねの上に成り立っていることが実感されます。
【参考】