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ゲノム編集最前線~ゲノム編集食品が出回るのはもう目前~

毎年中学3年生の遺伝の授業の前に、最新の情報収集をしています。昨年注目していたのは「iPS細胞ストック」「ゲノム編集」というキーワード。

 

用語概略

①iPS細胞

皮膚や血液の細胞に「山中ファクター」と呼ばれる4つの遺伝子を加えることで、どんな細胞にでもする事ができるiPS細胞を作ることができる。

②ゲノム編集

30億以上並んでいるDNA配列のうち、一箇所だけをハサミのように切り取ることができる技術。「クリスパーキャス」という特別なタンパク質を入れ込むことで、DNAの切りたいところを切り、再びつなげる事ができる。切り取ったところがガン化する可能性があるので、安全性の検証が必要。

③iPSストック

他人に移植しても、拒絶反応を示しにくいiPS細胞をストックする事で費用を抑えようとう取り組み。ゲノム編集によって、いままでつくった細胞のゲノムで、拒絶に関わるような遺伝子を少し編集すると、ほぼ全人類をカバーできるようなストックがつくれそうだということがわかってきた。

 

ゲノム編集の最前線

①筋肉量が2倍のマダイ

京都大学近畿大学のチームによって、ゲノム編集によって筋肉量が2倍のマダイが誕生した。生物は、筋肉が増えすぎてエネルギーを浪費しないよう、「ミオスタチン」というタンパク質で、筋肉の増加を抑えている。ゲノム編集によって、その遺伝子だけを切って、ミオスタチンが作られなくなったことで、このようなマダイが誕生した。

京大発、「肉厚マダイ」参上 -食に革命を起こすゲノム編集と安全 - 京都大学広報誌『紅萠』

www.nhk.or.jp

②受精卵でゲノム編集を行い病気の遺伝子を改変

広州 生物・医学研究所副所長 賴良学(らいりょうがく)教授は2014年に世界で初めて犬のゲノムを編集してミオスタチン遺伝子を切り取り筋肉を大幅に増強させた。その後、サルなどより人間に近い動物でもゲノム編集を実験的に行い成功させ、2015年4月に人間の受精卵でゲノム編集を行い病気の原因となる遺伝子を改変する実験に成功

 

③ゲノム編集でエイズを克服

エイズウィルスはリンパ球の表面の突起に結合してリンパ球の内部に侵入し増殖する。その後リンパ球を壊して体内に入っていく。そこで、採取した血液中のリンパ球のゲノムを編集して、突起をつくる遺伝子を切り取って患者の体内に戻すと、エイズウィルスの増殖を抑える事に成功した。

 

④ゲノム編集で作られた大豆油がすでに米で流通している

米カリクスト社は、ゲノム編集によって品種改良した大豆から採取した大豆油「Calyno」の販売を開始した。健康に悪影響を及ぼす飽和酸脂肪の含有量が少ないほか、トランス脂肪酸をまったく含んでいない。カリクトスの契約先には中西部でレストランチェーンを展開する企業が含まれており、Calynoはこのレストランで出される料理に使われている。

wired.jp

 

⑤日本でも2019年夏からゲノム編集食品の流通が可能に

厚生労働省は、遺伝子を切断して働きを止める方法は、自然に起こる突然変異や従来の品種改良と見分けがつかないので規制の対象外とした。一方、ゲノム編集には新しい遺伝子を挿入する方法もあり、この手法は安全性の確認が必要として、これまでの遺伝子組み換えと同じように安全性を審査する。

www.nikkei.com

 今後の追求テーマ

昨年は、ゲノム編集は医療の枠で進展していると考えていましたが、ゲノム編集食品が市場に出回るのはもう目前になっている事に驚きました。医療も食も、技術が進歩するスピードに、倫理観や安全性の判断が追いついていない印象です。各自が得られる情報をもとに判断しなければいけない状況が多くなると思うので、引き続き情報収集していきます。